雷鳴の話

 うだるような暑さに涼をもたらす夕立は、日本の典型的な夏の風物詩である。それに付き物なのが雷だ。まばゆい稲妻が空を切り裂き、耳をつんざく轟音が響き渡る。

雷鳴とは何なのか
 通常、空気は絶縁体である。だが、そこへ高い電圧をかけると絶縁が破壊され、放電が起きる。これが雷であり、放電経路が稲妻として確認される。無理矢理電気が流れるため稲妻付近の空気は加熱され、数万度にも達する。急激に暖められた空気は瞬時に膨張する。いわゆる「爆発」である。この際、放電経路は真空状態となる。これにより、衝撃波が発生する。また、次の瞬間には周りから冷たい空気が流れ込むため、これによっても音が発生する。これが雷鳴である。
 発生した音は地面や雲に当たって反射したり吸収されたりしながら広がっていくため、音のパターンは複雑になる。また、観測者が放電路(落雷地点)に近いほど、途中の障害物が少ないほど、雷鳴は大きくクリアに聞こえる。

「パリパリ、ドーン」の「パリパリ」とは何なのか
 BGMは落雷を録音したものである。パリパリ、ドーンという典型的な雷鳴だ。地面に直接落ちているため、「ドーン」という音がするのは容易に理解できるが、その前の「パリパリ」とは一体何なのだろうか。
 稲妻を見たことがある人ならわかると思うが、稲妻というのは地上に達した一本だけではなく、複雑に枝分かれしていることが多い。その中には落雷の経路よりも観測者に近いものが存在するかもしれない。これによる雷鳴が、「パリパリ」という音であると考えられる(下図参照)。
 従って、落雷地点までの距離を測りたければ、光ってから「ドーン」までの時間を計ればよい。「パリパリ」までの時間を計っても、無意味な数値が出てくるだけである。ちなみに簡単な計算式は「340(m)×時間(秒)」、適当に端折って変形すると「1/3(km)×時間(秒)」。よって、かかった時間(秒)を3で割ると落雷地点までの距離(km)が出る。この計算法はあまり紹介されていないが、パッと計算できて便利である。

奇怪な雷鳴
 こちらを聴いていただきたい。携帯電話で録音したため音質はあまりよくないが、普通の雷鳴ではないことがお分かりいただけただろうか。発光と同時に録音を開始、4秒後に「ガラガラガラ・・・」と聞こえ、それが数秒続いたと思ったら、13秒後、突然「バン、バンバーン・・・」という爆発音。私は録音の際、窓ガラスに手を当てていたが、音と同時に窓が内側にたわむのを感じた。
 落雷で発生した衝撃波がほとんど減衰せずに進んでいったようだ。このような雷鳴を聞いたのはこのときが最初で最後、貴重な体験ができた。


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